ロボット工学の権威、東光太郎が造った公害処理用アンドロイド・BK−1は、ある晩、落雷によって目覚める。「人間を支配する」という意志を持って動き出したBK−1は仲間のアンドロイドを従え「アンドロ軍団」を組織、自ら「ブライキング・ボス」と名乗り、圧倒的な軍事力をもって世界征服に乗り出す。

落雷の夜、命からがら逃げ延びた東一家の一人息子・東鉄也は、人類の敵を産み出してしまった父を思い、自ら最強のアンドロイド「新造人間」となりアンドロ軍団を倒すことを決意する。
しかしそれは、「二度と人間には戻れない」という究極の選択だった—。

人間の尊厳とは何か—。
アンドロイドでありながら、人類の救世主として孤独に戦うキャシャーンが「廃墟」で出会う人々は、時に弱く傲慢で醜い。彼等の生死を目の当たりにしながら、人間であることの、「命」の尊さを誰よりも強く感じるキャシャーンと、そんなキャシャーンの心を理解しようとする恋人のルナ—支えあうふたりの心の交流が、人間の誇りと「秩序」が失われた世界で、小さな希望に感じられる。
自分の中に残る人間の心を信じて戦い続けるキャシャーンの悲しくも美しい戦い、登場人物達の織り成す愛憎に満ちたドラマは、極限に追い込まれてもなお力強く生きようとする人間の生命力を鮮やかに映し出し、時代を越えて名作と呼ぶに相応しい。

『新造人間キャシャーン』(1973) タツノコプロダクション。
「新造人間」というタブーを主人公に、人間の知恵と勇気、友情、そして「家族」の愛を描く。全35話。


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